光る亀裂


03688
たれの吹くフルートならむ光りつつ亀裂を伝ふ水を思はす
タレノフク フルートナラム ヒカリツツ キレツヲツタフ ミズヲオモハス

『風水』(沖積舎 1986) p.161
【初出】 『形成』 1980.2 「無題」 (1)


03689
とどこほる思考のなかに入り来て不意に口あく納曽利の面は
トドコホル シコウノナカニ ハイリキテ フイニクチアク ナソリノメンハ

『風水』(沖積舎 1986) p.161
【初出】 『形成』 1980.2 「無題」 (2)


03690
思はざるゆとりのごとし菜を洗ひ湯のたぎる待つしばしの間
オモハザル ユトリノゴトシ ナヲアラヒ ユノタギルマツ シバシノアイダ

『風水』(沖積舎 1986) p.162
【初出】 『形成』 1980.2 「無題」 (3)


03691
しろじろと乾く日多き県道も土の色なす時雨のあとを
シロジロト カワクヒオオキ ケンドウモ ツチノイロナス シグレノアトヲ

『風水』(沖積舎 1986) p.162
【初出】 『形成』 1980.2 「無題」 (4)


03692
砂などの濡れて詰まれる重さかと晴れぬ思ひを運びて帰る
スナナドノ ヌレテツマレル オモサカト ハレヌオモヒヲ ハコビテカエル

『風水』(沖積舎 1986) p.162
【初出】 『形成』 1980.2 「無題」 (5)


03693
生者死者あまたの声に呼ばはれて騒然とあり夢の醒めぎは
ショウジャシシャ アマタノコエニ ヨバハレテ ソウゼントアリ ユメノサメギハ

『風水』(沖積舎 1986) p.163
【初出】 『形成』 1980.2 「無題」 (6)