目次
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全短歌(歌集等)
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風水
雲の影ゆく
はろばろと
足垂りて
雲がゆき
ほきほきと
体ごと
白檀の
黄ばみたる
手をひろげ
03747
はろばろとゆく雁見れば明日死なむ人とも知らずものを言ひゐき
ハロバロト ユクカリミレバ アスシナム ヒトトモシラズ モノヲイヒヰキ
『風水』(沖積舎 1986) p.184
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (1)
03748
足垂りてリフトに昇りゆきにしがかの夕べより帰らずといふ
アシタリテ リフトニノボリ ユキニシガ カノユウベヨリ カエラズトイフ
『風水』(沖積舎 1986) p.184
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (2)
03749
雲がゆき雲の影ゆく草原に逝きにし人のなべて恋ほしも
クモガユキ クモノカゲユク ソウゲンニ ユキニシヒトノ ナベテコホシモ
『風水』(沖積舎 1986) p.185
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (3)
03750
ほきほきと枝をおとして活けをれば季節はづれの小菊もやさし
ホキホキト エダヲオトシテ イケヲレバ キセツハヅレノ コギクモヤサシ
『風水』(沖積舎 1986) p.185
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (4)
03751
体ごと傾けて何を聴く人かをりをりかげる表情を見す
カラダゴト カタムケテナニヲ キクヒトカ ヲリヲリカゲル ヒョウジョウヲミス
『風水』(沖積舎 1986) p.185
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (5)
03752
白檀の香のする店にわれひとり筆を選びてひそかにゐたり
ビャクダンノ カノスルミセニ ワレヒトリ フデヲエラビテ ヒソカニヰタリ
『風水』(沖積舎 1986) p.186
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (6)
03753
黄ばみたる梔子を捨てなめらかな日ばかりならず六月も逝く
キバミタル クチナシヲステ ナメラカナ ヒバカリナラズ ロクガツモユク
『風水』(沖積舎 1986) p.186
【初出】
『形成』 1980.9 「無題」 (7)
03754
手をひろげ立ちはだかるはみづからの影とし思ふ三日ほど経て
テヲヒロゲ タチハダカルハ ミヅカラノ カゲトシオモフ ミッカホドヘテ
『風水』(沖積舎 1986) p.186