目次
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全短歌(歌集等)
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風水
石のてのひら
身に近く
いづくまで
欲深の
忘れゐる
帆船の
川水の
つぎ目より
どのやうに
耳二つ
いづこなる
03794
身に近く太鼓の音の荒れ狂ふ一夜のありて祭りも過ぎぬ
ミニチカク タイコノオトノ アレクルフ ヒトヨノアリテ マツリモスギヌ
『風水』(沖積舎 1986) p.202
03795
いづくまで昇るか知れね昇りゆき土に戻らぬ穂わたもあらむ
イヅクマデ ノボルカシレネ ノボリユキ ツチニモドラヌ ホワタモアラム
『風水』(沖積舎 1986) p.202
03796
欲深の木と思ふまでひろがれる欅なりしが色づきはじむ
ヨクフカノ キトオモフマデ ヒロガレル ケヤキナリシガ イロヅキハジム
『風水』(沖積舎 1986) p.203
03797
忘れゐること多からむ踏みゆけば栗の落ち葉の相似形なす
ワスレヰル コトオオカラム フミユケバ クリノオチバノ ソウジケイナス
『風水』(沖積舎 1986) p.203
03798
帆船のかたちの黒き影となり光の海を渡りてゆきぬ
ハンセンノ カタチノクロキ カゲトナリ ヒカリノウミヲ ワタリテユキヌ
『風水』(沖積舎 1986) p.203
03799
川水の反射のみなる暗がりに死にたるものはてのひら白し
カワミズノ ハンシャノミナル クラガリニ シニタルモノハ テノヒラシロシ
『風水』(沖積舎 1986) p.204
03800
つぎ目よりステンドグラスは割るるならむ思ひてをれば何か慰む
ツギメヨリ ステンドグラスハ ワルルナラム オモヒテヲレバ ナニカナグサム
『風水』(沖積舎 1986) p.204
03801
どのやうに死ぬわれならむ職業に深入りしたる悔い湧くらむか
ドノヤウニ シヌワレナラム ショクギョウニ フカイリシタル クイワクラムカ
『風水』(沖積舎 1986) p.204
03802
耳二つつね開きゐる苦しさかしのびて笑ふ声の入り来る
ミミフタツ ツネヒラキヰル クルシサカ シノビテワラフ コエノイリクル
『風水』(沖積舎 1986) p.205
03803
いづこなる女神なりしや寄りて来てわが肩に置く石のてのひら
イヅコナル メガミナリシヤ ヨリテキテ ワガカタニオク イシノテノヒラ
『風水』(沖積舎 1986) p.205