不意のみぞれ


03811
一つ一つ壊しつつ生きて来しならむチェコの硝子の灰皿も失す
ヒトツヒトツ コワシツツイキテ コシナラム チェコノガラスノ ハイザラモウス

『風水』(沖積舎 1986) p.209
【初出】 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (1)


03812
近づきて見るに色どりさまざまの鯉ゐる水の騒々しけれ
チカヅキテ ミルニイロドリ サマザマノ コイヰルミズノ ソウゾウシケレ

『風水』(沖積舎 1986) p.209
【初出】 『形成』 1980.12 「無題」 (5) / 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (2)


03813
外国のコインをあまた持ちゐしが少年は客間へ降り来ずなりぬ
ガイコクノ コインヲアマタ モチヰシガ ショウネンハキャクマヘ オリコズナリヌ

『風水』(沖積舎 1986) p.210
【初出】 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (3)


03814
駅の灯の届く路面に光りつつ乱れつつ降る不意のみぞれは
エキノヒノ トドクロメンニ ヒカリツツ ミダレツツフル フイノミゾレハ

『風水』(沖積舎 1986) p.210
【初出】 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (4)


03815
ハンガーに吊りおくコート静かなる第二楽章をわれは好めり
ハンガーニ ツリオクコート シズカナル ダイニガクショウヲ ワレハコノメリ

『風水』(沖積舎 1986) p.210
【初出】 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (5)


03816
時かけて語りあひつつ男ゆゑ女ゆゑ執することの違へる
トキカケテ カタリアヒツツ オトコユヱ オンナユヱシフスル コトノタガヘル

『風水』(沖積舎 1986) p.211
【初出】 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (6)


03817
働きを失ひて汀に立つ杭のかかはりあらぬもののしづけさ
ハタラキヲ ウシナヒテナギサニ タツクイノ カカハリアラヌ モノノシヅケサ

『風水』(沖積舎 1986) p.211
【初出】 『短歌研究』 1981.3 不意のみぞれ (7)