火矢

火をつけてループタイに人の声透明の襟もとを明けそめて一枚の

03883
火をつけて放つ矢などは持たねども美しからむ夜空に曳きて
ヒヲツケテ　ハナツヤナドハ　モタネドモ　ウツクシカラム　ヨゾラニヒキテ

『風水』(沖積舎　1986)　p.240
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(１)


03884
ループタイに何のメダルか光らせて歩むならむかかの人なども
ループタイニ　ナンノメダルカ　ヒカラセテ　アユムナラムカ　カノヒトナドモ

『風水』(沖積舎　1986)　p.240
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(２)


03885
人の声頭上より降り電線を持てる工夫の地上にもゐし
ヒトノコエ　ズジョウヨリフリ　デンセンヲ　モテルコウフノ　チジョウニモヰシ

『風水』(沖積舎　1986)　p.241
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(３)


03886
透明の縄にいましめられてゐてわれならぬ声にもの言ふ日あり
トウメイノ　ナワニイマシメ　ラレテヰテ　ワレナラヌコエニ　モノイフヒアリ

『風水』(沖積舎　1986)　p.241
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(４)


03887
襟もとをゆるむるやうにほぐれゆく花菖蒲見てひと日見飽かぬ
エリモトヲ　ユルムルヤウニ　ホグレユク　ハナショウブミテ　ヒトヒミアカヌ

『風水』(沖積舎　1986)　p.241
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(５)


03888
明けそめて沼のほとりのうすあかり思ひつつまた眠らむとする
アケソメテ　ヌマノホトリノ　ウスアカリ　オモヒツツマタ　ネムラムトスル

『風水』(沖積舎　1986)　p.242
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(６)


03889
一枚の古りし名刺に乱されてこころもとなく夕べををりぬ
イチマイノ　フリシメイシニ　ミダサレテ　ココロモトナク　ユウベヲヲリヌ

『風水』(沖積舎　1986)　p.242
【初出】　『形成』　1981.9　「無題」　(７)