風にまぎれて


03895
言葉あるものの如くにゐし二羽も飛びたちゆけり枝はずませて
コトバアル モノノゴトクニ ヰシニワモ トビタチユケリ エダハズマセテ

『風水』(沖積舎 1986) p.245
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (1)


03896
立つ煙たなびく煙いつの世の僧の植ゑにし竹か落ち葉す
タツケムリ タナビクケムリ イツノヨノ ソウノウヱニシ タケカオチバス

『風水』(沖積舎 1986) p.245
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (2)


03897
前を行く一人の帯に浮き出でし金糸の花もいつしかあらず
マエヲユク ヒトリノオビニ ウキイデシ キンシノハナモ イツシカアラズ

『風水』(沖積舎 1986) p.246
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (3)


03898
とどこほる思ひにをれば薄青き皮膜のごとし夕べの空は
トドコホル オモヒニヲレバ ウスアオキ ヒマクノゴトシ ユウベノソラハ

『風水』(沖積舎 1986) p.246
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (4)


03899
デッサンのやうにそばだちゐしビルの光の塔となりて暮れゆく
デッサンノ ヤウニソバダチ ヰシビルノ ヒカリノトウト ナリテクレユク

『風水』(沖積舎 1986) p.246
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (5)


03900
まろまろと昇る月見てもどり来ぬ狂ふことなく生くるも悲劇
マロマロト ノボルツキミテ モドリキヌ クルフコトナク イクルモヒゲキ

『風水』(沖積舎 1986) p.247
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (6)


03901
どのやうに身を刻むとも恋ふるともあめつちにただひとしづくなる
ドノヤウニ ミヲキザムトモ コフルトモ アメツチニタダ ヒトシヅクナル

『風水』(沖積舎 1986) p.247
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (7)


03902
遠ざかりつつ一縷なる思ひゆゑ風にまぎれてかよはむわれは
トオザカリ ツツイチルナル オモヒユヱ カゼニマギレテ カヨハムワレハ

『風水』(沖積舎 1986) p.247
【初出】 『文藝春秋』 1981.5 風にまぎれて (8)