冬の会話


04037
潮騒にまぎれがちなる会話してまた逢はむ日のいつとも知れず
シオサイニ マギレガチナル カイワシテ マタアハムヒノ イツトモシレズ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.79
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (1)


04038
夕焼けを遠く透かして人あらず四方ガラスの電話ボックス
ユウヤケヲ トオクスカシテ ヒトアラズ シホウガラスノ デンワボックス

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.80
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (2)


04039
藻のそよぎ鰭のそよぐを見てあれば水のなかにも風ある如し
モノソヨギ ヒレノソヨグヲ ミテアレバ ミズノナカニモ カゼアルゴトシ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.80
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (3)


04040
手をあげてバスに乗るまで水音の身を離れずにつきてゐにけり
テヲアゲテ バスニノルマデ ミズオトノ ミヲハナレズニ ツキテヰニケリ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.81
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (4)


04041
山茶花の散りしくあたり用のなき鶏のごとく歩めりわれは
サザンカノ チリシクアタリ ヨウノナキ ニワトリノゴトク アユメリワレハ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.81
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (5)


04042
雨のあと虹立つといふ現象も旅先にしてあはれを誘ふ
アメノアト ニジタツトイフ ゲンショウモ タビサキニシテ アハレヲサソフ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.82
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (6)


04043
隙間より何見て終ふるわれならむ時の流れの速くなりつつ
スキマヨリ ナニミテオフル ワレナラム トキノナガレノ ハヤクナリツツ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.82
【初出】 『短歌研究』 1983.1 冬の会話 (7)