等圧線


04066
アスファルトの路上につきゐる子らの鞠音のはずむと見て通り来ぬ
アスファルトノ ロジョウニツキヰル コラノマリ オトノハズムト ミテトオリキヌ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.95
【初出】 『抒情文芸』 1983.5 等圧線 (2)


04067
帰国の日も近しと書けりアマゾンの蝶の絵はがき今日は届きて
キコクノヒモ チカシトカケリ アマゾンノ チョウノエハガキ キョウハトドキテ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.96
【初出】 『郵政』 1983.3 ブロンズの像 (1)


04068
天気図の等圧線を見てゐしが不意にわが持つ渦とかさなる
テンキズノ トウアツセンヲ ミテヰシガ フイニワガモツ ウズトカサナル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.96
【初出】 『抒情文芸』 1983.5 等圧線 (7)


04069
せぐくまり反故燃しをれば降り出でてドラマのなかに降る雪に似る
セグクマリ ホゴモシヲレバ フリイデテ ドラマノナカニ フルユキニニル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.97
【初出】 『抒情文芸』 1983.5 等圧線 (8)


04070
バスに見て過ぐる校門偶像の如くに崩れし雪像を置く
バスニミテ スグルコウモン グウゾウノ ゴトクニクズレシ セキゾウヲオク

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.97
【初出】 『形成』 1982.5 「無題」 (1)


04071
黒革の手袋もいつか身に添ふと吊り皮の右手見をれば思ふ
クロカワノ テブクロモイツカ ミニソフト ツリカワノミギテ ミヲレバオモフ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.98
【初出】 『抒情文芸』 1983.5 等圧線 (1)


04072
スカーフの風によぢれてどこまでもつきて来るもの影のみならぬ
スカーフノ カゼニヨヂレテ ドコマデモ ツキテクルモノ カゲノミナラヌ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.98
【初出】 『短歌ミューズ』 1982.1 水中花 (5)