目次
/
全短歌(歌集等)
/
印度の果実
ほつつり赤し
店先に
音もなく
夕闇の
暗渠より
つまづきて
岬幾つ
光りつつ
すさまじき
砂浜に
惑はしの
いつまでも
踏絵踏む
滅多には
04073
店先にダンボール踏み潰しをり何かいさぎよき行為のごとし
ミセサキニ ダンボールフミ ツブシヲリ ナニカイサギヨキ コウイノゴトシ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.99
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (2)
04074
音もなくすり抜けてゆきし自転車の林の道に入りたるが見ゆ
オトモナク スリヌケテユキシ ジテンシャノ ハヤシノミチニ イリタルガミユ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.100
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (3)
04075
夕闇の畑に人の影うごきカタコンベなど掘るにあらずや
ユウヤミノ ハタケニヒトノ カゲウゴキ カタコンベナド ホルニアラズヤ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.100
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (4)
04076
暗渠よりまろび出でたるゴム鞠は一直線に流れゆきたり
アンキョヨリ マロビイデタル ゴムマリハ イッチョクセンニ ナガレユキタリ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.101
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (5)
04077
つまづきて五体ほどけしときのまに野火の匂ひにとりかこまれぬ
ツマヅキテ ゴタイホドケシ トキノマニ ノビノニオヒニ トリカコマレヌ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.101
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (6)
04078
岬幾つ越えて届くやこの世ならぬ音に午報のサイレン聞こゆ
ミサキイクツ コエテトドクヤ コノヨナラヌ オトニゴホウノ サイレンキコユ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.102
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (7)
04079
光りつつ岬をめぐりて消えしものヨットの白帆のみと思へず
ヒカリツツ ミサキヲメグリテ キエシモノ ヨットノシラホ ノミトオモヘズ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.102
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (10)
04080
すさまじき海の入り日よかの島に全滅したる一隊ありき
スサマジキ ウミノイリヒヨ カノシマニ ゼンメツシタル イッタイアリキ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.103
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (12)
04081
砂浜に日ざし移ろひ影踏みをしてゐし子らもいつしか在らず
スナハマニ ヒザシウツロヒ カゲフミヲ シテヰシコラモ イツシカアラズ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.103
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (11)
04082
惑はしの言葉のごとく大津絵にほつつり赤し椿の花は
マドハシノ コトバノゴトク オオツエニ ホツツリアカシ ツバキノハナハ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.104
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (16)
04083
いつまでも嗄れゐる声をあはれまれ電話を切ればまた風の音
イツマデモ カレヰルコエヲ アハレマレ デンワヲキレバ マタカゼノオト
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.104
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (18)
04084
踏絵踏む足の次々あらはるる夢醒めて寒しわれのあなうら
フミエフム アシノツギツギ アラハルル ユメサメテサムシ ワレノアナウラ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.105
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (19)
04085
滅多にはあらぬことにて揃へやる男の靴の大きかりしか
メッタニハ アラヌコトニテ ソロヘヤル オトコノクツノ オオキカリシカ
『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.105
【初出】
『俳句とエッセイ』 1983.4 砂文字 (20)