冷えてゆく皿


04154
女坂のぼれば狐の祠あり頰をそがれて白し狐は
オンナザカ ノボレバキツネノ ホコラアリ ホオヲソガレテ シロシキツネハ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.145
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (1)


04155
木の影のなかにしばしばわが影を吸ひ込ませつつ歩みゆきたり
キノカゲノ ナカニシバシバ ワガカゲヲ スヒコマセツツ アユミユキタリ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.145
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (2)


04156
いつまでもバスの来ざれば手袋のままに手話して少女らのをり
イツマデモ バスノコザレバ テブクロノ ママニシュワシテ ショウジョラノヲリ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.146
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (3)


04157
デパートの前の思はぬくらがりを過ぎてタクシー乗り場も寒し
デパートノ マエノオモハヌ クラガリヲ スギテタクシー ノリバモサムシ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.146
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (4)


04158
非常口を示す緑の灯を見たるまなうら寒く眠らむとする
ヒジョウグチヲ シメスミドリノ ヒヲミタル マナウラサムク ネムラムトスル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.147
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (5)


04159
世帯主の欄にわが名を書き入れてひとりぐらしも久しくなりぬ
セタイヌシノ ランニワガナヲ カキイレテ ヒトリグラシモ ヒサシクナリヌ

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.147
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (7)


04160
洗ひたる皿のたちまち冷えゆくは死にたる人の冷えゆくに似る
アラヒタル サラノタチマチ ヒエユクハ シニタルヒトノ ヒエユクニニル

『印度の果実』(短歌新聞社 1986) p.148
【初出】 『短歌研究』 1984.3 わが名 (6)