薬草園


04220
雨のなかのマラソンコース伴走のバイクぐらりと揺れて近づく
アメノナカノ マラソンコース バンソウノ バイクグラリト ユレテチカヅク

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.29
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (1)


04221
デフォルメの犬の感じに小走りに曳かれて行けりダックスフント
デフォルメノ イヌノカンジニ コバシリニ ヒカレテユケリ ダックスフント

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.29
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (2)


04222
何を奪ふ企みならむエンジンをかけしまま長く駐車してゐて
ナニヲウバフ タクラミナラム エンジンヲ カケシママナガク チュウシャシテヰテ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.30
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (3)


04223
一列に咲きそろひたる鶏頭の日かげの花は黒ずみて見ゆ
イチレツニ サキソロヒタル ケイトウノ ヒカゲノハナハ クロズミテミユ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.30
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (4)


04224
石塔に刻まれて残る文字うすく宝暦九年はいかなる年か
セキトウニ キザマレテノコル モジウスク ホウレキクネンハ イカナルトシカ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.30
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (5)


04225
薬草園を出でて歩めば思はざる山の裾より電車現る
ヤクソウエンヲ イデテアユメバ オモハザル ヤマノスソヨリ デンシャアラワル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.31
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (6)


04226
とりとめのなき花ながら藤ばかま束ねて色のやや濃くなりぬ
トリトメノ ナキハナナガラ フジバカマ タバネテイロノ ヤヤコクナリヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.31
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (7)


04227
頂をいつまでも見せぬ山一つ山の形はわれの目が知る
イタダキヲ イツマデモミセヌ ヤマヒトツ ヤマノカタチハ ワレノメガシル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.31
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (8)


04228
子らが降りてしづかになれば喘鳴をかすかに引けり隣の人は
コラガオリテ シヅカニナレバ ゼンメイヲ カスカニヒケリ トナリノヒトハ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.32
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (9)


04229
野の道は下りとなりぬ果物の熟るる匂ひをかそかに嗅ぎて
ノノミチハ クダリトナリヌ クダモノノ ウルルニオヒヲ カソカニカギテ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.32
【初出】 『文芸埼玉』 1987.12 薬草園 (10)