隠れ里


04240
庇打つ音は小鳥の渡るらし雨かとしばし聞き耳を立つ
ヒサシウツ オトハコトリノ ワタルラシ アメカトシバシ キキミミヲタツ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.37


04241
アメリカのイーグル金貨持つこともなくて今年の秋深みたり
アメリカノ イーグルキンカ モツコトモ ナクテコトシノ アキフカミタリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.37


04242
スプーンよりしたたり落ちしひとしづく酸の匂ひとなりてひろがる
スプーンヨリ シタタリオチシ ヒトシヅク サンノニオヒト ナリテヒロガル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.38


04243
みづからのための果汁を絞らむに葡萄は種子をよくはじくなり
ミヅカラノ タメノカジュウヲ シボラムニ ブドウハシュシヲ ヨクハジクナリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.38


04244
サンダルを足に探りてマンションの裏の一画わが隠れ里
サンダルヲ アシニサグリテ マンションノ ウラノイッカク ワガカクレサト

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.38