冬の桜


04252
三メートルほどをへだてて向きあへる狛犬のほとり賑はふ日あり
サンメートル ホドヲヘダテテ ムキアヘル コマイヌノホトリ ニギハフヒアリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.45
【初出】 『短歌研究』 1989.1 冬の桜 (1)


04253
とめどなくくらがりを飛ぶ蝙蝠を仰ぎて飛べぬ蝙蝠われは
トメドナク クラガリヲトブ コウモリヲ アオギテトベヌ コウモリワレハ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.45


04254
花閉ぢて雨のひと日の福寿草黄の鞠小さく黒土に置く
ハナトヂテ アメノヒトヒノ フクジュソウ キノマリチサク クロツチニオク

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.46
【初出】 『短歌研究』 1989.1 冬の桜 (3)


04255
柿の木を仰ぎて人を呼ぶ声の次第に高くうはずりゆけり
カキノキヲ アオギテヒトヲ ヨブコエノ シダイニタカク ウハズリユケリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.46


04256
花びらとなりてこぼれつ賜ひたる冬の桜を夜の灯に解けば
ハナビラト ナリテコボレツ タマヒタル フユノサクラヲ ヨノヒニトケバ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.46
【初出】 『短歌研究』 1989.1 冬の桜 (5)