黒薔薇のいろ


04271
放牧の牛は山より帰るとぞ冷たくなりぬ車の把手も
ホウボクノ ウシハヤマヨリ カエルトゾ ツメタクナリヌ クルマノノブモ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.52
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (1)


04272
吾亦紅を添へたる供華のそよげども世を隔てたる者はしづけし
ワレモコウヲ ソヘタルクゲノ ソヨゲドモ ヨヲヘダテタル モノハシヅケシ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.52
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (2)


04273
声もなくみ仏は千手ひらきゐつ一臂に鉾の先光りゐつ
コエモナク ミホトケハセンジュ ヒラキヰツ イツピニホコノ サキヒカリヰツ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.53
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (3)


04274
ふくらかに脇侍は双手合はせをりわれは自儘な女に過ぎず
フクラカニ ワキジハモロテ アハセヲリ ワレハジママナ オンナニスギズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.53
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (4)


04275
薔薇園の冬の荒びに黄の花の咲き残りゐて風に抗ふ
バラエンノ フユノスサビニ キノハナノ サキノコリヰテ カゼニアラガフ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.53
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (5)


04276
逆光の丘の木立は樺いろの紙に置きたる切り絵のごとき
ギャッコウノ オカノコダチハ カバイロノ カミニオキタル キリエノゴトキ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.54
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (6)


04277
ひと世かけてわれは何せむ三代を経て出づるとふ黒薔薇のいろ
ヒトヨカケテ ワレハナニセム サンダイヲ ヘテイヅルトフ クロバラノイロ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.54
【初出】 『短歌研究』 1988.1 黒薔薇のいろ (7)