忘らるるよはひ


04303
光と影をすばやくかさね目の前の金屏二双畳まれゆけり
ヒカリトカゲヲ スバヤクカサネ メノマエノ キンビョウニソウ タタマレユケリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.64
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (1)


04304
気がつけば他人ばかりの顔のなか促してわれに帰る家あり
キガツケバ タニンバカリノ カオノナカ ウナガシテワレニ カエルイエアリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.64
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (2)


04305
ささめきて葉先ふるはすセロリなど買ひて戻らむひとりの夜へ
ササメキテ ハサキフルハス セロリナド カヒテモドラム ヒトリノヨルヘ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.65
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (3)


04306
何か言ふ人もあらねばこぼしたる黄の錠剤をかき寄せてをり
ナニカイフ ヒトモアラネバ コボシタル キノジョウザイヲ カキヨセテヲリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.65
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (4)


04307
四方八方しづくの音にかこまれて雪の夜は雪の檻のごとしも
シホウハッポウ シヅクノオトニ カコマレテ ユキノヨハユキノ オリノゴトシモ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.65
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (5)


04308
忘らるるよはひと人の歌に読み世をのがれゐる如きしづけさ
ワスラルル ヨハヒトヒトノ ウタニヨミ ヨヲノガレヰル ゴトキシヅケサ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.66
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (6)


04309
ひとりゐに朝寝といふもさびしけれ雪はこまかく裂けて降りくる
ヒトリヰニ アサネトイフモ サビシケレ ユキハコマカク サケテフリクル

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.66
【初出】 『短歌研究』 1988.3 忘らるるよはひ (7)