版画の鴉


04355
燃えしぶりゐたりし紙の形代は燃え尽きむとして炎あげたり
モエシブリ ヰタリシカミノ カタシロハ モエツキムトシテ ホノオアゲタリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.86
【初出】 『埼玉歌人』 1989.7 版画の鴉 (1)


04356
映像のまぶしき日にてFMにモーツアルトのコンチェルト聞く
エイゾウノ マブシキヒニテ エフエムニ モーツアルトノ コンチェルトキク

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.86
【初出】 『埼玉歌人』 1989.7 版画の鴉 (2)


04357
混み合へる待合室の片隅に繃帯を巻けるゴッホもゐたり
コミアヘル マチアイシツノ カタスミニ ホウタイヲマケル ゴッホモヰタリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.87
【初出】 『埼玉歌人』 1989.7 版画の鴉 (3)


04358
扇形にひろげられゆく紙幣見ゆガラス隔てし無風のかなた
センケイニ ヒロゲラレユク シヘイミユ ガラスヘダテシ ムフウノカナタ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.87
【初出】 『埼玉歌人』 1989.7 版画の鴉 (4)


04359
飛び出して来む勢ひにばらばらと鴉は舞へり版画の空を
トビダシテ コムイキオヒニ バラバラト カラスハマヘリ ハンガノソラヲ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.87
【初出】 『埼玉歌人』 1989.7 版画の鴉 (5)