迷はずに落つ


04395
集まりて降るにもあらぬ梅雨の雨ひとすぢひとすぢ迷はずに落つ
アツマリテ フルニモアラヌ ツユノアメ ヒトスヂヒトスヂ マヨハズニオツ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.101
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (1)


04396
アイリスを活け替へをれば賜はりしいとまと思ふまでに癒えきぬ
アイリスヲ イケカヘヲレバ タマハリシ イトマトオモフ マデニイエキヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.101
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (2)


04397
読みさしを机に伏せて出で来しが迎への舟の待つにもあらず
ヨミサシヲ ツクエニフセテ イデコシガ ムカヘノフネノ マツニモアラズ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.102
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (3)


04398
路面よりやや浮き立ちて夏草の短き橋はかかりゐにけり
ロメンヨリ ヤヤウキタチテ ナツクサノ ミジカキハシハ カカリヰニケリ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.102
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (4)


04399
品触れの珊瑚の如くかがよひて尾を垂らしゐるかんざし一つ
シナブレノ サンゴノゴトク カガヨヒテ オヲタラシヰル カンザシヒトツ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.102
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (5)


04400
簪の占ひといふがありにしがなにゆゑ偶数を凶としにけむ
カンザシノ ウラナヒトイフガ アリニシガ ナニユヱグウスウヲ キョウトシニケム

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.103
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (6)


04401
夜の道に投げ出されたる洋傘に降りゐし雪は今も目に見ゆ
ヨノミチニ ナゲダサレタル カウモリニ フリヰシユキハ イマモメニミユ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.103
【初出】 『短歌往来』 1989.7 迷わずに落つ (7)