目次
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全短歌(歌集等)
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風の曼陀羅
晩夏日常
坐りゐて
医薬もて
クーラーを
眼鏡とれば
盲目の
背負はれて
木理あらく
04444
坐りゐて見えざりしもの雑然と見えて立ちゐてくらくらとせり
スワリヰテ ミエザリシモノ ザツゼント ミエテタチヰテ クラクラトセリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.119
04445
医薬もて部分部分を癒やしつつ全身のことは癒やしがたきか
イヤクモテ ブブンブブンヲ イヤシツツ ゼンシンノコトハ イヤシガタキカ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.119
04446
クーラーを入れたる刹那新聞がばさと羽音を立てて落ちたり
クーラーヲ イレタルセツナ シンブンガ バサトハオトヲ タテテオチタリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.120
04447
眼鏡とれば雌蕊雄蕊も花びらも黄に霞みたり弟切草は
メガネトレバ メシベオシベモ ハナビラモ キニカスミタリ オトギリソウハ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.120
04448
盲目の花と思へど紅蜀葵目鼻ととのふ面輪のごとし
モウモクノ ハナトオモヘド モミジアオイ メハナトトノフ オモワノゴトシ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.120
04449
背負はれて泣きやむとなく行きにしが猫に似てゐるみどりごの声
セオハレテ ナキヤムトナク ユキニシガ ネコニニテヰル ミドリゴノコエ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.121
04450
木理あらく灰いろなすは何の木か逝く夏の葉を暗く茂らす
キメアラク ハイイロナスハ ナンノキカ ユクナツノハヲ クラクシゲラス
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.121