目次
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全短歌(歌集等)
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風の曼陀羅
軍手
音のして
見しことも
疑はず
乱れずに
ニュース待ちて
天安門
青墨を
十年は
いち早く
あをあをと
雪国に
二十代の
どの家の
さまざまに
04464
音のして皿にこぼれて昔々ルビーのやうなドロップありき
オトノシテ サラニコボレテ ムカシムカシ ルビーノヤウナ ドロップアリキ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.131
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (1)
04465
見しこともなきまさかりを知りてをり童話の挿絵に大きかりけり
ミシコトモ ナキマサカリヲ シリテヲリ ドウワノサシエニ オオキカリケリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.131
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (2)
04466
疑はず軍手と呼びて使ひ来ぬ今もそのまま洗へば白し
ウタガハズ グンテトヨビテ ツカヒキヌ イマモソノママ アラヘバシロシ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.132
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (3)
04467
乱れずに筋をはこびて人は言ひ蚕豆の花あまた咲きゐき
ミダレズニ スジヲハコビテ ヒトハイヒ ソラマメノハナ アマタサキヰキ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.132
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (4)
04468
ニュース待ちてかけおくテレビに男性がタルタルソースの作法を教ふ
ニュースマチテ カケオクテレビニ ダンセイガ タルタルソースノ サホウヲオシフ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.132
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (5)
04469
天安門広場の略図切り抜きて挟みありしが辞書よりこぼる
テンアンモン ヒロバノリャクズ キリヌキテ ハサミアリシガ ジショヨリコボル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.133
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (6)
04470
青墨を磨るときの香に匂ひたりカーネーションの束をほどけば
アオズミヲ スルトキノカニ ニオヒタリ カーネーションノ タバヲホドケバ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.133
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (7)
04471
十年は経しと思へど取り出でてムートンに残るけものの臭ひ
ジュウネンハ ヘシトオモヘド トリイデテ ムートンニノコル ケモノノニオヒ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.133
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (8)
04472
いち早くビルに昏みて白猫の渡りゐるさへ不似合ひの街
イチハヤク ビルニクラミテ シロネコノ ワタリヰルサヘ フニアヒノマチ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.134
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (9)
04473
あをあをと茹でし春菊を賜ひたり木枯らしすさぶ巷より来て
アヲアヲト ユデシシュンギクヲ タマヒタリ コガラシスサブ チマタヨリキテ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.134
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (10)
04474
雪国に在りて恋ひにしカンボジアのアンコールワットも傷めりといふ
ユキグニニ アリテコヒニシ カンボジアノ アンコールワットモ イタメリトイフ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.134
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (11)
04475
二十代の後半にして台風の目のしづけさといふを知りにき
ニジュウダイノ コウハンニシテ タイフウノ メノシヅケサト イフヲシリニキ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.135
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (12)
04476
どの家の犬も啼かずて午前二時団地二百戸しづまりかへる
ドノイエノ イヌモナカズテ ゴゼンニジ ダンチニヒャクコ シヅマリカヘル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.135
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (13)
04477
さまざまに迷ひたれども光源を遠ざけてゆくごとく眠りぬ
サマザマニ マヨヒタレドモ コウゲンヲ トオザケテユク ゴトクネムリヌ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.135
【初出】
『短歌』 1990.2 軍手 (14)