目次
/
全短歌(歌集等)
/
風の曼陀羅
文学少女
節分草
四十年
つどひては
漠然と
舞ひ立てば
今に残る
綿菓子を
討たれしは
東京の
軍港の
茎細き
再発を
わが在るを
はるばると
そのかみの
04484
節分草見ずやと招かれ来し家は双子の姉妹が生まれてゐたり
セツブンソウ ミズヤトマネカレ コシイエハ フタゴノシマイガ ウマレテヰタリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.139
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (1)
04485
四十年離れて住みてふるさとの雪をんなの噂も聞かれずなりぬ
シジュウネン ハナレテスミテ フルサトノ ユキヲンナノウワサモ キカレズナリヌ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.139
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (2)
04486
つどひてはさびしき儀式ばかりしてひと世を人の終ふるならずや
ツドヒテハ サビシキギシキ バカリシテ ヒトヨヲヒトノ オフルナラズヤ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.140
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (3)
04487
漠然と見てゐたりしが女童の髪を撫でゐき左の手にて
バクゼント ミテヰタリシガ メワラワノ カミヲナデヰキ ヒダリノテニテ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.140
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (4)
04488
舞ひ立てば離ればなれにたんぽぽの穂わたの一つ一つは気球
マヒタテバ ハナレバナレニ タンポポノ ホワタノヒトツ ヒトツハキキュウ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.140
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (5)
04489
今に残る富士見坂の名ゆるやかにバスは車体をあらはして来ぬ
イマニノコル フジミザカノナ ユルヤカニ バスハシャタイヲ アラハシテキヌ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.141
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (6)
04490
綿菓子を作るおもちやも売られゐつ初午といふ村の祭りに
ワタガシヲ ツクルオモチヤモ ウラレヰツ ハツウマトイフ ムラノマツリニ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.141
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (7)
04491
討たれしはいかなる鬼か鬼を討ちて勝鬨あげし岩が残れり
ウタレシハ イカナルオニカ オニヲウチテ カチドキアゲシ イワガノコレリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.141
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (8)
04492
東京の空も雪雲北国にゆくへの知れぬ人ひとりあり
トウキョウノ ソラモユキグモ キタグニニ ユクヘノシレヌ ヒトヒトリアリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.142
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (9)
04493
軍港のウラジオストック唱へつつ地図に探しき三年生は
グンコウノ ウラジオストック トナヘツツ チズニサガシキ サンネンセイハ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.142
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (10)
04494
茎細き少女なりしが亡き今も髪長く結ふ三つ編みにして
クキホソキ オトメナリシガ ナキイマモ カミナガクユフ ミツアミニシテ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.142
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (11)
04495
再発を怖れつつ経し一年に見納めと見し真夏の花火
サイハツヲ オソレツツヘシ イチネンニ ミオサメトミシ マナツノハナビ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.143
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (12)
04496
わが在るを確かめて足る夜なりや無言電話はさびしきものを
ワガアルヲ タシカメテタル ヨルナリヤ ムゴンデンワハ サビシキモノヲ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.143
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (13)
04497
はるばると送られて来て香に匂ふ越前岬の水仙の花
ハルバルト オクラレテキテ カニニオフ エチゼンミサキノ スイセンノハナ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.143
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (14)
04498
そのかみの文学少女波の音のテープを聴きて眠らむとする
ソノカミノ ブンガクショウジョ ナミノネノ テープヲキキテ ネムラムトスル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.144
【初出】
『短歌新聞』 1990.3 文学少女 (15)