目次
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全短歌(歌集等)
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風の曼陀羅
風聞
繭いろの
烏瓜
いつの世の
復元の
亡き人を
本ばかり
電車の窓の
同じ家族の
本当に
桃いろの
名を変へて
越しゆける
窓枠の
咲き残る
集ひても
冬ざくら
04526
繭いろの雲がちぎれて飛びゐしに思ひもかけぬ太き雨降る
マユイロノ クモガチギレテ トビヰシニ オモヒモカケヌ フトキアメフル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.157
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (1)
04527
烏瓜熟れて点れり最後かも知れぬと思ふ夏も終はりて
カラスウリ ウレテトモレリ サイゴカモ シレヌトオモフ ナツモオハリテ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.157
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (2)
04528
いつの世のことなりにしやわれひとり蚊遣りを焚きて機を織りゐき
イツノヨノ コトナリニシヤ ワレヒトリ カヤリヲタキテ ハタヲオリヰキ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.158
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (3)
04529
復元の民家の大きくらがりに火伏せの札の貼られゐる見つ
フクゲンノ ミンカノオオキ クラガリニ ヒブセノフダノ ハラレヰルミツ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.158
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (4)
04530
亡き人をあしざまに言ふを聞きをればわが死のあとのはかり知られず
ナキヒトヲ アシザマニイフヲ キキヲレバ ワガシノアトノ ハカリシラレズ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.158
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (5)
04531
本ばかり積み置く家を如何に見てセールスマンは帰りしならむ
ホンバカリ ツミオクイエヲ イカニミテ セールスマンハ カエリシナラム
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.159
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (6)
04532
電車の窓のどこかあきゐておぶはれしみどりごの髪ふはふは吹かる
デンシャノマドノ ドコカアキヰテ オブハレシ ミドリゴノカミ フハフハフカル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.159
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (7)
04533
同じ家族の住みゐる見れば建て替へて大きくなりしのみなる家か
オナジカゾクノ スミヰルミレバ タテカヘテ オオキクナリシ ノミナルイエカ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.159
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (8)
04534
本当に鍵あけて柵をのがれしや吠ゆるほかなくこの犬はゐる
ホントウニ カギアケテサクヲ ノガレシヤ ホユルホカナク コノイヌハヰル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.160
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (9)
04535
桃いろのガーベラは花の大きくてわれには普通のガーベラが良き
モモイロノ ガーベラハハナノ オオキクテ ワレニハフツウノ ガーベラガヨキ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.160
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (10)
04536
名を変へて移り住まむとしてゐたり生き生きと夢のなかなるわれは
ナヲカヘテ ウツリスマムト シテヰタリ イキイキトユメノ ナカナルワレハ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.160
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (11)
04537
越しゆける向かひの家の鳩時計どこのマンションに二時を打ちゐむ
コシユケル ムカヒノイエノ ハトドケイ ドコノマンションニ ニジヲウチヰム
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.161
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (12)
04538
窓枠の高さに届かぬ子もをりて保母をかこみてうごき回れる
マドワクノ タカサニトドカヌ コモヲリテ ホボヲカコミテ ウゴキマワレル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.161
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (13)
04539
咲き残る帰化植物の黄の花は丈高く火炎のかたちを掲ぐ
サキノコル キカショクブツノ キノハナハ タケタカクカエンノ カタチヲカカグ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.161
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (14)
04540
集ひても散りても色のとりどりに大き声せり老いし人らは
ツドヒテモ チリテモイロノ トリドリニ オオキコエセリ オイシヒトラハ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.162
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (15)
04541
冬ざくら見むと車を降りしとき不意の寒さは顔にあつまる
フユザクラ ミムトクルマヲ オリシトキ フイノサムサハ カオニアツマル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.162
【初出】
『雁』 1991.4 風聞 (16)