目次
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全短歌(歌集等)
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風の曼陀羅
声もあげずに
セロファンの
ときじくの
ディオールか
丈高く
右の手の
かすかなる
紋章の
単純な
痛きところの
白き布を
どのやうな
山深く
ねんごろの
シャガールの
04542
セロファンの音がどうしても立つゆゑにそのままいだく薔薇の花束
セロファンノ オトガドウシテモ タツユヱニ ソノママイダク バラノハナタバ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.165
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (1)
04543
ときじくのまなかひに降る日照り雨光の粒を撒くごとく降る
トキジクノ マナカヒニフル ヒデリアメ ヒカリノツブヲ マクゴトクフル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.165
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (2)
04544
ディオールかミツコか知れず差しかけて呉れゐし傘をのがれ来つれば
ディオールカ ミツコカシレズ サシカケテ クレヰシカサヲ ノガレキツレバ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.166
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (3)
04545
丈高くポインセチアはありにしを声もあげずに枯れてしまひぬ
タケタカク ポインセチアハ アリニシヲ コエモアゲズニ カレテシマヒヌ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.166
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (4)
04546
右の手のぬくもる如し牛乳の昔の瓶を思ひてをれば
ミギノテノ ヌクモルゴトシ ギュウニュウノ ムカシノビンヲ オモヒテヲレバ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.166
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (5)
04547
かすかなる地震のありて起きゐるは隣の犬とわれのみになる
カスカナル ジシンノアリテ オキヰルハ トナリノイヌト ワレノミニナル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.167
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (6)
04548
紋章のいはれなどどうでも今はよく枯れ葉垂りゐる祖父の桐の木
モンショウノ イハレナドドウデモ イマハヨク カレハタリヰル ソフノキリノキ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.167
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (7)
04549
単純な形のわが家われを入れ埴輪の家のごとくしづもる
タンジュンナ カタチノワガヤ ワレヲイレ ハニワノイエノ ゴトクシヅモル
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.167
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (8)
04550
痛きところの無き日は点字を打つといふ祈りにあらむ点字を打つは
イタキトコロノ ナキヒハテンジヲ ウツトイフ イノリニアラム テンジヲウツハ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.168
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (9)
04551
白き布をのべたるごとき蕎麦の花ふるふると動く近くに見れば
シロキヌノヲ ノベタルゴトキ ソバノハナ フルフルトウゴク チカクニミレバ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.168
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (10)
04552
どのやうななりゆきに大人七人の家族住みゐてひつそりとせり
ドノヤウナ ナリユキニオトナ シチニンノ カゾクスミヰテ ヒツソリトセリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.168
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (11)
04553
山深く入れば呼びたくなるといふわれならばたれの名を呼ぶならむ
ヤマフカク イレバヨビタク ナルトイフ ワレナラバタレノ ナヲヨブナラム
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.169
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (12)
04554
ねんごろの見舞ひなりしが去りぎはに人のいのちを測る目をせり
ネンゴロノ ミマヒナリシガ サリギハニ ヒトノイノチヲ ハカルメヲセリ
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.169
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (13)
04555
シャガールのリトグラフには花が咲き馬がゐて鳥がゐて人もゐたりす
シャガールノ リトグラフニハ ハナガサキ ウマガヰテトリガヰテ ヒトモヰタリス
『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.169
【初出】
『短歌』 1991.2 声もあげずに (14)