世紀は熟れぬ


04566
道化師の仮装のままに行く人を怪しまぬまで世紀は熟れぬ
ドウケシノ カソウノママニ ユクヒトヲ アヤシマヌマデ セイキハウレヌ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.174
【初出】 『短歌研究』 1991.3 世紀は熟れぬ (1)


04567
花と花がつながりながら褪せゆけりわが目の前の紅梅ひと木
ハナトハナガ ツナガリナガラ アセユケリ ワガメノマエノ コウバイヒトキ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.174
【初出】 『短歌研究』 1991.3 世紀は熟れぬ (2)


04568
遂に子に恵まれざりしと書けるあり昔の女学生の賀状のなかに
ツイニコニ メグマレザリシト カケルアリ ムカシノジョガクセイノ ガジョウノナカニ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.175
【初出】 『短歌研究』 1991.3 世紀は熟れぬ (3)


04569
鬼剣舞と呼ばるる村の獅子舞は母のうしろに隠れてぞ見し
オニケンバイト ヨバルルムラノ シシマイハ ハハノウシロニ カクレテゾミシ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.175
【初出】 『短歌研究』 1991.3 世紀は熟れぬ (4)


04570
船宿にあはく軒灯ともるころ何しにひとりわれは行きけむ
フナヤドニ アハクケントウ トモルコロ ナニシニヒトリ ワレハユキケム

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.175
【初出】 『短歌研究』 1991.3 世紀は熟れぬ (5)


04571
馬の埴輪・鎧・兜と見て来しに櫛と笄なまなましけれ
ウマノハニワ ヨロイカブトト ミテコシニ クシトカウガイ ナマナマシケレ

『風の曼陀羅』(短歌研究社 1991) p.176
【初出】 『短歌研究』 1991.3 世紀は熟れぬ (7)