じやがたらぶみ


04689
縫ひ針を撒きたるごとく光りつつ消えつつ稚魚は水にちらばる
ヌヒバリヲ マキタルゴトク ヒカリツツ キエツツチギョハ ミズニチラバル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.37
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (1)


04690
つながりて咲く曼珠沙華はればれともう一本が離れて咲けり
ツナガリテ サクマンジュシャゲ ハレバレト モウイッポンガ ハナレテサケリ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.38
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (2)


04691
くくと啼き岸に寄りくる一列に混じりてあらばわれはどの鴨
ククトナキ キシニヨリクル イチレツニ マジリテアラバ ワレハドノカモ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.38
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (3)


04692
渋滞の車のほとり温室の曇りのなかに人かげ動く
ジュウタイノ クルマノホトリ オンシツノ クモリノナカニ ヒトカゲウゴク

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.39
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (4)


04693
女装かと思ひたれども金の環のピアスしてゐて耳が小さし
ジョソウカト オモヒタレドモ キンノワノ ピアスシテヰテ ミミガチイサシ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.39
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (5)


04694
会はぬまま四十年かデモのあと流れ解散して別れにし
アハヌママ ヨンジュウネンカ デモノアト ナガレカイサン シテワカレニシ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.40
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (6)


04695
煩悩の一つのごとし吊るされし塩鮭の絵を目が覚えゐて
ボンノウノ ヒトツノゴトシ ツルサレシ シオザケノエヲ メガオボエヰテ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.40
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (7)


04696
みどりごは見えぬもの見て泣くといふ噴水の秀に冬の日が差す
ミドリゴハ ミエヌモノミテ ナクトイフ フンスイノホニ フユノヒガサス

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.41
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (8)


04697
耳悪しき少女と犬も気付きしか吠ゆるをやめて撫でられてゐる
ミミアシキ ショウジョトイヌモ キヅキシカ ホユルヲヤメテ ナデラレテヰル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.41
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (9)


04698
思ふさまあばれてゐたる旗すすき一幅の絵に戻りてそよぐ
オモフサマ アバレテヰタル ハタススキ イップクノエニ モドリテソヨグ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.42
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (10)


04699
貴石とも葱の種子とも知れねどもひとつぶひとつぶ土に埋めをり
キセキトモ ネギノシュシトモ シレネドモ ヒトツブヒトツブ ツチニウメヲリ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.42
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (11)


04700
戦にて中止となりし年ありき若草山をこよひ燃すとぞ
イクサニテ チュウシトナリシ トシアリキ ワカクサヤマヲ コヨヒモストゾ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.43
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (12)


04701
七草の三草ばかりの粥といふ雪のカナダに人は住みゐて
ナナクサノ ミクサバカリノ カユトイフ ユキノカナダニ ヒトハスミヰテ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.43
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (13)


04702
おほかたを渡り終へたるわがひと世じやがたらぶみは書かなくて済む
オホカタヲ ワタリオヘタル ワガヒトヨ ジヤガタラブミハ カカナクテスム

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.44
【初出】 『短歌』 1992.2 じゃがたらぶみ (14)