或る日


04703
風の夜の更けゆくままに金属の冷たき椅子はいづこの駅か
カゼノヨノ フケユクママニ キンゾクノ ツメタキイスハ イヅコノエキカ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.45
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (1)


04704
誰に言ふことにあらねどそののちの四十年は速く過ぎにき
タレニイフ コトニアラネド ソノノチノ ヨンジュウネンハ ハヤクスギニキ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.46
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (2)


04705
欠航となれば渡れぬ海なりし魚雷のうはさ町に流れて
ケッコウト ナレバワタレヌ ウミナリシ ギョライノウハサ マチニナガレテ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.46
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (3)


04706
ひるがへる僧衣の袖にすきとほりどこか異界を見たりし如し
ヒルガヘル ソウイノソデニ スキトホリ ドコカイカイヲ ミタリシゴトシ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.47
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (4)


04707
明王の孔雀も棟の鳳凰もほどよく翼をあげて静止す
ミヤウワウノ クジャクモムネノ ホウオウモ ホドヨクツバサヲ アゲテセイシス

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.47
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (5)


04708
連続の非連続かは知らねども滝に打たれて白衣の行者
レンゾクノ ヒレンゾクカハ シラネドモ タキニウタレテ ビャクイノギヤウジヤ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.48
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (6)


04709
人はみな背中向けゐて水鳥の綿毛のやうな雪が降りくる
ヒトハミナ セナカムケヰテ ミズドリノ ワタゲノヤウナ ユキガフリクル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.48
【初出】 『短歌研究』 1992.3 或る日 (7)