背後の音


04718
待ちかねてゐたる如くに一散に飛び立ちゆけり草の穂わたは
マチカネテ ヰタルゴトクニ イツサンニ トビタチユケリ クサノホワタハ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.54
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (1)


04719
下萌えのヘアピン・カーブくだるとき危ふくて美しかりし夕日よ
シタモエノ ヘアピンカーブ クダルトキ アヤフクテウツクシ カリシユウヒヨ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.55
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (2)


04720
をみなゆゑ天人もみごもる日のありと聞きて壁画の前を離れぬ
ヲミナユヱ テンニンモミゴモル ヒノアリト キキテヘキガノ マエヲハナレヌ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.55
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (3)


04721
真相は知らるる無くて風のあとさだかに匂ふひひらぎの花
シンソウハ シラルルナクテ カゼノアト サダカニニオフ ヒヒラギノハナ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.56
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (4)


04722
江戸のころ拓かれし田も用水も武蔵野にありてほろびむとする
エドノコロ ヒラカレシタモ ヨウスイモ ムサシノニアリテ ホロビムトスル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.56
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (5)


04723
音のしてすべり落ちしは唯の紙背後の音は身をおびやかす
オトノシテ スベリオチシハ タダノカミ ハイゴノオトハ ミヲオビヤカス

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.57
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (6)


04724
うづたかく本のみ積みてわが棲むはかたちばかりの門のある家
ウヅタカク ホンノミツミテ ワガスムハ カタチバカリノ モンノアルイエ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.57
【初出】 『北の文学』 1992.5 背後の音 (7)