野の上


04801
たれも居なくなりても咲かむ糸桜雌蕊雄蕊のひそとととのふ
タレモイナク ナリテモサカム イトザクラ メシベオシベノ ヒソトトトノフ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.102
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (1)


04802
かなたまで麦は熟れたり蒔く人も刈る人もいまだこの世にをりて
カナタマデ ムギハウレタリ マクヒトモ カルヒトモイマダ コノヨニヲリテ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.103
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (2)


04803
三連の水車しつらへ見物とす水争ひは半世紀まへ
サンレンノ スイシャシツラヘ ミモノトス ミズアラソヒハ ハンセイキマヘ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.103
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (3)


04804
トラクターは部品が無くて新しく三百万のローン組むとぞ
トラクターハ ブヒンガナクテ アタラシク サンビャクマンノ ローンクムトゾ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.104
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (4)


04805
甲虫にある裏表裏側はリモコンか何かのやうに混みあふ
コウチュウニ アルウラオモテ ウラガワハ リモコンカナニカノ ヤウニコミアフ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.104
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (5)


04806
睡蓮の鉢に緋目高を飼ふといふ生きものの死はかなしきものを
スイレンノ ハチニヒメダカヲ カフトイフ イキモノノシハ カナシキモノヲ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.105
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (6)


04807
子供らを抱きあげて乗せていづこまでお祓ひを受けし白のワゴン車
コドモラヲ ダキアゲテノセテ イヅコマデ オハラヒヲウケシ シロノワゴンシャ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.105
【初出】 『短歌現代』 1993.7 野の上 (7)