昔も今も


04808
あやまたず白の子山羊が生まれしとめづらしきことの如く告げくる
アヤマタズ シロノコヤギガ ウマレシト メヅラシキコトノ ゴトクツゲクル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.106
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (1)


04809
晴れ女雨をんななど言ひ合ひて少女らはをりバス待ちながら
ハレオンナ アメヲンナナド イヒアヒテ ショウジョラハヲリ バスマチナガラ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.107
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (2)


04810
かかはりのあるならねども右の手を先立てて危ふく走るみどりご
カカハリノ アルナラネドモ ミギノテヲ サキダテテアヤフク ハシルミドリゴ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.107
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (3)


04811
朝摘みの蚕豆をむくわが爪はうすももいろのマニキュアのまま
アサツミノ ソラマメヲムク ワガツメハ ウスモモイロノ マニキュアノママ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.108
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (4)


04812
もどしたる干し椎茸を洗ひゐて軟体はふとかなしみを呼ぶ
モドシタル ホシシイタケヲ アラヒヰテ ナンタイハフト カナシミヲヨブ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.108
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (5)


04813
さかさまに切手は貼りて合図する手紙ありけり寮生われに
サカサマニ キッテハハリテ アイズスル テガミアリケリ リョウセイワレニ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.109
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (6)


04814
クレオパトラのことのみをよく覚えゐて答案に書く女生徒をりき
クレオパトラノ コトノミヲヨク オボエヰテ トウアンニカク ジョセイトヲリキ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.109
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (7)


04815
家族ぐるみコーン刈る見て故里を思ふとホームスティの少女
カゾクグルミ コーンカルミテ フルサトヲ オモフトホーム スティノショウジョ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.110
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (8)


04816
目の覚めむころ炊きあがるセットして預けおく如しわれのひと夜を
メノサメム コロタキアガル セットシテ アズケオクゴトシ ワレノヒトヨヲ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.110
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (9)


04817
耳を立てて聴く日は石にもありといふくぼみの水はいつの夜の雨
ミミヲタテテ キクヒハイシニモ アリトイフ クボミノミズハ イツノヨノアメ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.111
【初出】 『短歌往来』 1993.9 昔も今も (10)