いきなり広く


04888
帰り来て知りし草の名如何にせむミセバヤは淡きくれなゐの花
カエリキテ シリシクサノナ イカニセム ミセバヤハアワキ クレナヰノハナ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.152
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (1)


04889
鼻の差に勝ちし馬あり足首を挫きて去りて行く名馬あり
ハナノサニ カチシウマアリ アシクビヲ クジキテサリテ ユクメイバアリ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.153
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (2)


04890
覚えねばならぬ単語のきらきらとまなかひ馳せて楽しかりしか
オボエネバ ナラヌタンゴノ キラキラト マナカヒハセテ タノシカリシカ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.153
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (3)


04891
五十パーセントづつの確率持ちあひてコートにこぼす金貨ひとひら
ゴジッパーセント ヅツノカクリツ モチアヒテ コートニコボス キンカヒトヒラ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.154
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (4)


04892
どのやうな運勢の日か目の前がいきなり広く空くことのあり
ドノヤウナ ウンセイノヒカ メノマエガ イキナリヒロク アクコトノアリ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.154
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (5)


04893
透明のエレベーターは外壁に添ひてゆるやかに灯を引き揚げぬ
トウメイノ エレベーターハ ガイヘキニ ソヒテユルヤカニ ヒヲヒキアゲヌ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.155
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (1)


04894
ひつたりとまはりを鎮め女性の手最後の骰子を振らむとしをり
ヒツタリト マハリヲシズメ ジョセイノテ サイゴノサイヲ フラムトシヲリ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.155
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (2)


04895
いくたびも斬り合ひをせしが飛び道具一挺出でて忽ちとなる
イクタビモ キリアヒヲセシガ トビドウグ イッチョウイデテ タチマチトナル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.156
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (3)


04896
湯の里に持ち行くことの許されぬ細きかんざし母にありにし
ユノサトニ モチユクコトノ ユルサレヌ ホソキカンザシ ハハニアリニシ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.156
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (4)


04897
来む世には誰にスカーフ編むらむかこの世に見にし人も忘るる
コムヨニハ タレニスカーフ アムラムカ コノヨニミニシ ヒトモワスルル

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.157
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (5)


04898
とどこほる雲のごときは差し措きて力ある者走り続けよ
トドコホル クモノゴトキハ サシオキテ チカラアルモノ ハシリツヅケヨ

『光たばねて』(短歌新聞社 1998) p.157
【初出】 『波濤』 1994.1 いきなり広く (6)