04899
一日彼と口をきかざりし快感もはかなし一人残務なしつつ
イチニチカレト　クチヲキカザリシ　カイカンモ　ハカナシヒトリ　ザンムナシツツ

04900
苦しめられし事も忘れむ中年の人のもつ寂しき打算と思ひて
クルシメラレシ　コトモワスレム　チュウネンノ　ヒトノモツサビシキ　ダサントオモヒテ

04901
ありのままを言ひしかば又憎まれむ会果てて一人帰り来りぬ
アリノママヲ　イヒシカバマタ　ニクマレム　カイハテテヒトリ　カエリキタリヌ

04902
折合ひのつかぬまま今日は別れ来つ夕べの霧に耳がつめたし
オリアヒノ　ツカヌママキョウハ　ワカレキツ　ユウベノキリニ　ミミガツメタシ

04903
張り合ひて生くる事にも疲れ果つ勤め辞めむ日を描く秘かに
ハリアヒテ　イクルコトニモ　ツカレハツ　ツトメヤメムヒヲ　エガクヒソカニ

04904
表紙絵をたのみに来にし谷の村菜種の花が一めんに燃ゆ
ヒョウシエヲ　タノミニキニシ　ヤツノムラ　ナタネノハナガ　イチメンニモユ

04905
蘇芳色に何の花か咲ける坂の上にわが訪ひゆかむアトリエが見ゆ
スオウイロニ　ナンノハナカサケル　サカノウエニ　ワガトヒユカム　アトリエガミユ