寂しき言葉


04906
現在こそ総てと言捨てし君の言葉聞きしより長く心冷えゐる
ゲンザイコソ スベテトイイステシ キミノコトバ キキシヨリナガク ココロヒエヰル

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8


04907
金銭に淡白なる二人の生き方を子の無き故と人は噂すらしも
キンセンニ タンパクナルフタリノ イキカタヲ コノナキユエト ヒトハウワサスラシモ

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8


04908
夜半覚めてそれより長く雨を聞く何の夢見て泣きゐしならむ
ヨワサメテ ソレヨリナガク アメヲキク ナンノユメミテ ナキヰシナラム

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8


04909
もの書きて更かす幾夜の続きつつ明るく描く未来もあらず
モノカキテ フカスイクヨノ ツヅキツツ アカルクエガク ミライモアラズ

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8


04910
オポチユニストと低く呟き振返るベレーかぶれる彼の背後を
オポチユニストト ヒククツブヤキ フリカエル ベレーカブレル カレノハイゴヲ

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8


04911
纏りなくなれる心よ人を恃まず生きむ希ひにも疲れ来りて
マトマリナク ナレルココロヨ ヒトヲタノマズ イキムネガヒニモ ツカレキタリテ

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8


04912
アマリリスの色の香にふと蘇へる印象薄れゐしかの日の言葉
アマリリスノ イロノカニフト ヨミガヘル インショウウスレヰシ カノヒノコトバ

『形成』(形成発行所 1953.7) 第1巻3号(通巻3号) p.8