04948
白く乾きしガーゼたためり対岸の灯が瞬きて見ゆる窓辺に
シロクカワキシ　ガーゼタタメリ　タイガンノ　ヒガマタタキテ　ミユルマドベニ

04949
出世を望まば道もあらむと縁者らに思はれゐる事も知れり二人は
シュッセヲノゾマバ　ミチモアラムト　エンジャラニ　オモハレヰルコトモ　シレリフタリハ

04950
寝る前に焜爐に石油みたしおくならはしよ視野狭く生きつつ
ネルマエニ　コンロニセキユ　ミタシオク　ナラハシヨシヤ　セマクイキツツ

04951
星あかりに材木を積む音しをり終電を降りてよぎる空地に
ホシアカリニ　ザイモクヲツム　オトシヲリ　シュウデンヲオリテ　ヨギルアキチニ

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真実は必ず通らむなどと説きて世事には疎き教師なりしよ
シンジツハ　カナラズトオラム　ナドトトキテ　セジニハウトキ　キョウシナリシヨ

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うちつけに理解さるると思はねどパンセの句引きて返事書き終ふ
ウチツケニ　リカイサルルト　オモハネド　バンセノクヒキテ　ヘンジカキオフ

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何時までも合はぬ算盤に苛ちゆく西陽をまともに受くる座席に
イツマデモ　アハヌソロバンニ　イラチユク　ニシビヲマトモニ　ウクルザセキニ

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耳ふさぎたき衝動に堪へて坐りゐつ人の言葉みな偽善めく夕べ
ミミフサギタキ　ショウドウニタヘテ　スワリヰツ　ヒトノコトバミナ　ギゼンメクユウベ

04956
とり繕ひつつ報告書書く夜の事務所集り悪き会を終へ来て
トリツクロヒツツ　ホウコクショカク　ヨルノジムショ　アツマリワルキ　カイヲオヘキテ

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校正に通ひ慣れたるこの坂のほとりに今年も山茶花咲けり
コウセイニ　カヨヒナレタル　コノサカノ　ホトリニコトシモ　サザンカサケリ

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病身にて娶らぬ君が集め来し埴輪らあたたかき眼をしゐるかも
ビョウシンニテ　メトラヌキミガ　アツメコシ　ハニワラアタタカキ　メヲシヰルカモ

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独り身も清しと言ひゐしが涙に濡れたる顔を直して帰りゆきたり
ヒトリミモ　スガシトイヒヰシガ　ナミダニヌレタル　カオヲナオシテ　カエリユキタリ