04960
憎むより愍れめば心は休まると悟り来ぬ二十代も過ぎむとしつつ
ニクムヨリ アワレメバココロハ ヤスマルト サトリキヌニジュウダイモ スギムトシツツ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04961
蹠より冷えくる夕べ頭痛薬のみて会議録とる席に戻りぬ
アナウラヨリ ヒエクルユウベ ズツウヤクノミテ カイギロクトル セキニモドリヌ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04962
君と同じ見方なし得ぬ寂しさも超えゆかむ永き月日をかけて
キミトオナジ ミカタナシエヌ サビシサモ コエユカムナガキ ツキヒヲカケテ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04963
送らむと言ふを拒みて帰り来つ行きずりの人と今は思はむ
オクラムト イフヲコバミテ カエリキツ ユキズリノヒトト イマハオモハム

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04964
満ち足れる如く思はせ来しことも負担となりつ母と対へば
ミチタレル ゴトクオモハセ コシコトモ フタントナリツ ハハトムカヘバ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04965
羽振りよき隣家を羨めど商売など所詮なし得ずと知りをり母も
ハブリヨキ リンカヲウラヤメド アキナイナド ショセンナシエズト シリヲリハハモ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04966
小金溜むるたれかれの噂などしつつ母は老いゆく安らひもなく
コガネタムル タレカレノウワサ ナドシツツ ハハハオイユク ヤスラヒモナク

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04967
いつまでも母を安んぜしめ得ぬわれか夫の酒量を今日も問はるる
イツマデモ ハハヲヤスンゼシメ エヌワレカ ツマノシュリョウヲ キョウモトハルル

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04968
北の故郷に住みて死にたしと思ひいます母と知れど誰も触るる事なし
キタノクニニ スミテシニタシト オモヒイマス ハハトシレドタレモ フルルコトナシ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04969
盗癖もつ少年に手を焼く友に対へばとりとめもなしわが不幸感
トウヘキモツ ショウネンニテヲヤク トモニムカヘバ トリトメモナシ ワガフコウカン

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04970
マルキストの友持ちて苦しむ妹にピアノ買はむ夢などあるが笑ましき
マルキストノ トモモチテクルシム イモウトニ ピアノカハムユメナド アルガエマシキ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04971
辛うじて辻褄を合はせゐし心乱されぬ汝の詮索に遭ひて
カロウジテ ツジツマヲアハセ ヰシココロ ミダサレヌナノ センサクニアヒテ

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5


04972
われを詰りて帰りゆきしがこの月夜汝も寂しく歩みてをらむ
ワレヲナジリテ カエリユキシガ コノツキヨ ナレモサビシク アユミテヲラム

『形成』(形成発行所 1954.2) 第2巻2号(通巻10号) p.5