余波


05022
子は鎹など言ひ合ひて子無き我の別れ住めるを人のはかなむ
コハカスガヒ ナドイヒアヒテ コナキワレノ ワカレスメルヲ ヒトノハカナム

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05023
一気に坂を駆け下りる如きその末路を思へば君も寂しき一人
イッキニサカヲ カケオリルゴトキ ソノマツロヲ オモヘバキミモ サビシキヒトリ

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05024
別れ住むと知らず来し君が教へ子ら九時まで待たせて帰しやりたり
ワカレスムト シラズキシキミガ オシヘゴラ クジマデマタセテ カエシヤリタリ

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05025
おのづから守勢に立てる如き一日押し黙り原稿を割付けてゆく
オノヅカラ シュセイニタテル ゴトキヒトヒ オシダマリゲンコウヲ ワリツケテユク

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05026
代り得る人無しと言はれ慰むや又一年編集を続けねばならぬ
カワリウル ヒトナシトイハレ ナグサムヤ マタイチネンヘンショウヲ ツヅケネバナラヌ

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05027
頭の皮膚の痛み来れば鬢どめを外しつつ要点速記を続く
アタマノヒフノ イタミキタレバ ビンドメヲ ハズシツツヨウテン ソッキヲツヅク

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05028
障壁もつ事も編集の責を担ふ証左ぞと自らに諭す日があり
ショウヘキモツ コトモヘンシュウノ セメヲニナフ ショウサゾトミズカラニ サトスヒガアリ

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05029
アルバイトより帰れる妹フランス語の動詞変化を誦しゐるけはひ
アルバイトヨリ カエレルイモウト フランスゴノ ドウシヘンカヲ ズシヰルケハヒ

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05030
俄かに胸に火点きし如く夜更かして論拠となさむ章句書き抜く
ニワカニムネニ ヒツキシゴトク ヨフカシテ ロンキョトナサム ショウクカキヌク

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9


05031
背高き妹に似合ふや仮縫ひ終へし水色のドレスをたたみ眠らむ
セイタカキ イモウトニニアフヤ カリヌヒオヘシ ミズイロノドレスヲ タタミネムラム

『形成』(形成発行所 1954.8) 第2巻8号(通巻16号) p.9