砂礫


05032
苦しみて積み重ね来しはただ砂礫の如きかと旅寝の夜半にし思ふ
クルシミテ ツミカサネコシハ タダサレキノ ゴトキカトタビネノ ヨワニシオモフ

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05033
小さき祠をまつれる丘の朝ぐもり牛使ひつつ人の耕す
チサキホコラニ マツレルオカノ アサグモリ ウシツカヒツツ ヒトノタガヤス

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05034
曇りつつ明るき芝生メンバーの揃はぬ野球を子らは続くる
クモリツツ アカルキシバフ メンバーノ ソロハヌヤキュウヲ コラハツヅクル

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05035
心渇くともみづから癒やす外はなし夜半の水道は飛沫をあぐる
ココロカワクトモ ミヅカライヤス ホカハナシ ヨワノスイドウハ ヒマツヲアグル

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05036
孤独にゐて人を恕すことも易からず又堰を切りて悲しみは来る
コドクニヰテ ヒトヲユルスコトモ ヤスカラズ マタセキヲキリテ カナシミハクル

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05037
秘めて来し被虐の過程をあばくごと当なき手記を夜々綴りゆく
ヒメテコシ ヒギャクノカテイヲ アバクゴト アテナキシュキヲ ヨヨツヅリユク

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05038
累ね来し錯誤と思へどその過去に規制されゆく未来と知れり
カサネコシ サクゴトオモヘド ソノカコニ キセイサレユク ミライトシレリ

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05039
手は何にさしのべむ如何に描くとも茫々と寂しわが未来像
テハナニニ サシノベムイカニ エガクトモ ボウボウトサビシ ワガミライゾウ

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7


05040
告げ難き悲しみ持つと知る母か薔薇切りて駅まで見送りくれぬ
ツゲガタキ カナシミモツト シルハハカ バラキリテエキマデ ミオクリクレヌ

『形成』(形成発行所 1954.9) 第2巻9号(通巻17号) p.7