05050
底深く教員たりし日を恋ふわれか酔へる君等のかたはらに坐す
ソコフカク　キョウインタリシヒヲ　コフワレカ　ヨヘルキミラノ　カタハラニザス

05051
教へ子の嫁ぐとふ便り旧家などに安住し得ぬ性と思ふに
オシヘゴノ　トツグトフタヨリ　キュウカナドニ　アンジュウシエヌ　サガトオモフニ

05052
一人一人の少女にわが夢を鏤めつつ港町の女学校に勤めし五年
ヒトリヒトリノ　オトメニワガユメヲ　チリバメツツ　ミナトマチノジョガッコウニ　ツトメシゴネン

05053
甘えむ相手を持たぬ身の朝より寂しくて有明けのあはき月に見とるる
アマエムアイテヲ　モタヌミノアサヨリ　サビシクテ　アリアケノアハキ　ツキニミトルル

05054
俗物と呼ばれつつ或る強さ持つ友と思ひ幾日脳裡を去らず
ゾクブツト　ヨバレツツアル　ツヨサモツ　トモトオモヒイクヒ　ノウリヲサラズ

05055
市税とりに来し君が今日は自作の詩ののれるパンフレットをくれて行きたり
シゼイトリニ　コシキミガキョウハ　ジサクノシノ　ノレルパンフレットヲ　クレテユキタリ

05056
幼な子を背に攀ぢさせてなごみいましきまかり来て心深くぬくもる
オサナゴヲ　セニヨヂサセテ　ナゴミイマシキ　マカリキテココロ　フカクヌクモル

05057
窓の下にいつまでも囁き交はす声世界隔ててわれは眠らむ
マドノシタニ　イツマデモササヤキ　カハスコエ　セカイヘダテテ　ワレハネムラム