05391
貝踏みて切りしあなうら癒えがたく玫瑰実りゐむ海を恋ふ
カイフミテ　キリシアナウラ　イエガタク　ハマナスミノリ　ヰムウミヲコフ

05392
つぎつぎに花終へて葵実りゆく疑へばきりもあらぬ寂しさ
ツギツギニ　ハナオヘテアオイ　ミノリユク　ウタガヘバキリモ　アラヌサビシサ

05393
読みさしの本の幾冊移り来し部屋にまた積み幾日か過ぐ
ヨミサシノ　ホンノイクサツ　ウツリコシ　ヘヤニマタツミ　イクニチカスグ

05394
会果ててとり残されし夜の部屋に重み減りゆく如く酔ひくる
カイハテテ　トリノコサレシ　ヨノヘヤニ　オモミヘリユク　ゴトクヨヒクル

05395
石膏にまみれし手洗ふかたはらに復原成れる埴輪が親し
セッコウニ　マミレシテアラフ　カタハラニ　フクゲンナレル　ハニワガシタシ

05396
土器の破片をさまざまに組み合はせつつ凝りゆかむ思ひ自ら怖る
ドキノハヘンヲ　サマザマニクミ　アハセツツ　コリユカムオモヒ　ミズカラオソル