月かげ


05404
拠り難き党ならば去れと割切りて言ひたれど今は友も忿らず
ヨリガタキ トウナラバサレト ワリキリテ イヒタレドイマハ トモモイカラズ

『形成』(形成発行所 1957.11) 第5巻11号(通巻55号) p.6


05405
離ればなれの心となりて歩みゐつ坂のぼりつめて灯る駅見ゆ
ハナレバナレノ ココロトナリテ アユミヰツ サカノボリツメテ トモルエキミユ

『形成』(形成発行所 1957.11) 第5巻11号(通巻55号) p.6


05406
雨となる気配に昏れてまなうらに影かさねつつ人のゆきかふ
アメトナル ケハイニクレテ マナウラニ カゲカサネツツ ヒトノユキカフ

『形成』(形成発行所 1957.11) 第5巻11号(通巻55号) p.6


05407
見えがくれしつつ遠ざかる人のかげ月の光を避けて歩むや
ミエガクレ シツツトオザカル ヒトノカゲ ツキノヒカリヲ サケテアユムヤ

『形成』(形成発行所 1957.11) 第5巻11号(通巻55号) p.6


05408
月明き夜毎眠りのふかくしてすでに解かれし呪縛と思ふ
ツキアカキ ヨゴトネムリノ フカクシテ スデニトカレシ ジュバクトオモフ

『形成』(形成発行所 1957.11) 第5巻11号(通巻55号) p.6


05409
山鳩の啼きかはしゐて明るきに草合歓の花を濡らす雨見ゆ
ヤマバトノ ナキカハシヰテ アカルキニ クサネムノハナヲ ヌラスアメミユ

『形成』(形成発行所 1957.11) 第5巻11号(通巻55号) p.6