冬木


05435
足もとより崩るる思ひいくたびか抑揚を変へてまたかげる湖
アシモトヨリ クズルルオモヒ イクタビカ ヨクヨウヲカヘテ マタカゲルウミ

『形成』(形成発行所 1958.2) 第6巻2号(通巻58号) p.3


05436
ふり向かせたくて口笛鳴らせしか地上のなべてむなしき刻に
フリムカセ タクテクチブエ ナラセシカ チジョウノナベテ ムナシキトキニ

『形成』(形成発行所 1958.2) 第6巻2号(通巻58号) p.3


05437
年月の模索のさまをあばくごと掘り返されてゆく樹の根見つ
トシツキノ モサクノサマヲ アバクゴト ホリカエサレテ ユクキノネミツ

『形成』(形成発行所 1958.2) 第6巻2号(通巻58号) p.3


05438
内深き磨耗のわれにいつ熄まむ風穴遠く夜もすがら鳴る
ウチフカキ マモウノワレニ イツヤマム カザアナトオク ヨモスガラナル

『形成』(形成発行所 1958.2) 第6巻2号(通巻58号) p.3


05439
バスを待つ日溜りの椅子に毛糸編めり唖の少女の中なるひとり
バスヲマツ ヒダマリノイスニ ケイトアメリ オシノショウジョノ ナカナルヒトリ

『形成』(形成発行所 1958.2) 第6巻2号(通巻58号) p.3


05440
水甕に水をみたして夜々眠る母の生き方にもわれは及ばぬ
ミズガメニ ミズヲミタシテ ヨヨネムル ハハノイキカタニモ ワレハオヨバヌ

『形成』(形成発行所 1958.2) 第6巻2号(通巻58号) p.3