灯かげ


05460
三椏の花吹きあぐる夜の疾風一重の窓にへだてがたしも
ミツマタノ ハナフキアグル ヨノハヤチ ヒトエノマドニ ヘダテガタシモ

『形成』(形成発行所 1958.6) 第6巻6号(通巻62号) p.21


05461
溶けがたき硼砂をグラスに透かしつつ指紋憚る罪にもうとし
トケガタキ ホウサヲグラスニ スカシツツ シモンハバカル ツミニモウトシ

『形成』(形成発行所 1958.6) 第6巻6号(通巻62号) p.21


05462
着くづれを直して戻り来し椅子のなぞへにたれの耳環か光る
キクヅレヲ ナオシテモドリ コシイスノ ナゾヘニタレノ ミミワカヒカル

『形成』(形成発行所 1958.6) 第6巻6号(通巻62号) p.21


05463
野の果てに風を招びつつ立つ一樹コートに喪服つつみて歩む
ノノハテニ カゼヲヨビツツ タツヒトキ コートニモフク ツツミテアユム

『形成』(形成発行所 1958.6) 第6巻6号(通巻62号) p.21


05464
少しづつ歪みの除れてゆくごとくたゆたひて雲の塊ながる
スコシヅツ ヒズミノトレテ ユクゴトク タユタヒテクモノ カタマリナガル

『形成』(形成発行所 1958.6) 第6巻6号(通巻62号) p.21


05465
内暗き硝子窓ゆゑ夜もすがら映しゐたらむ遠き灯かげも
ウチクラキ ガラスマドユヱ ヨモスガラ ウツシヰタラム トオキホカゲモ

『形成』(形成発行所 1958.6) 第6巻6号(通巻62号) p.21