初冬のころ


05497
水滴を光らせて牛洗ふさま橋渡り来て遠し故郷も
スイテキヲ ヒカラセテウシ アラフサマ ハシワタリキテ トオシフルサトモ

『形成』(形成発行所 1959.1) 第7巻1号(通巻69号) p.5


05498
弱りたる視力と思ひ立ちゐしがプラカードも友らもぐんぐん近づく
ヨワリタル シリョクトオモヒ タチヰシガ プラカードモトモラモ グングンチカヅク

『形成』(形成発行所 1959.1) 第7巻1号(通巻69号) p.5


05499
行事繁き季節も過ぎむ落ち柿の腐つ匂ひを夜毎に嗅ぎて
ギョウジシゲキ キセツモスギム オチガキノ クダツニオヒヲ ヨゴトニカギテ

『形成』(形成発行所 1959.1) 第7巻1号(通巻69号) p.5


05500
枯れ野より枯れ野へ渡る土橋ゆゑ水の澄めるを誰も見ざらむ
カレノヨリ カレノヘワタル ドバシユヱ ミズノスメルヲ タレモミザラム

『形成』(形成発行所 1959.1) 第7巻1号(通巻69号) p.5


05501
人形の部品を作る友の家胡粉塗られて小さき足ら
ニンギョウノ ブヒンヲツクル トモノイエ コフンヌラレテ チイサキアシラ

『形成』(形成発行所 1959.1) 第7巻1号(通巻69号) p.5


05502
裁ち屑を片寄せて掃く夜の畳こころ擡ぐることも少なく
タチクズヲ カタヨセテハク ヨノタタミ ココロモタグル コトモスクナク

『形成』(形成発行所 1959.1) 第7巻1号(通巻69号) p.5