季冬のころ


05503
詰る手紙ねぎらふ葉書などありてかさね置く夜の心に重く
ナジルテガミ ネギラフハガキ ナドアリテ カサネオクヨノ ココロニオモク

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3


05504
病むといふ噂を聽けばまた惑ふいつまでわれを放たぬ夫か
ヤムトイフ ウワサヲキケバ マタマドフ イツマデワレヲ ハナタヌツマカ

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3


05505
身を交す構へに歩む街の上まぼろしなして雁流る
ミヲカハス カマヘニアユム マチノウエ マボロシナシテ カリガネナガル

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3


05506
指貫をはめしままなる夜の眠り夫の記憶もはるかになりぬ
ユビヌキヲ ハメシママナル ヨノネムリ ツマノキオクモ ハルカニナリヌ

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3


05507
呼び交し夜の街に出づ結論を明日にもちこすこともたのしく
ヨビカワシ ヨノマチニイヅ ケツロンヲ アスニモチコス コトモタノシク

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3


05508
ふるさとの樹氷の山の幻聽を呼びて月さす芝生かがやく
フルサトノ ジュヒョウノヤマノ ゲンチョウヲ ヨビテツキサス シバフカガヤク

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3


05509
事務室の窓に葉蘭の鉢を置き異動期まへのしづけき幾日
ジムシツノ マドニハランノ ハチヲオキ イドウキマヘノ シヅケキイクヒ

『形成』(形成発行所 1959.3) 第7巻3号(通巻71号) p.3