雨のあと


05528
使ひ得ぬ語彙のみ思ひ浮ぶ日よ出で来て梅の落ち実を拾ふ
ツカヒエヌ ゴイノミオモヒ ウカブヒヨ イデキテウメノ オチミヲヒロフ

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53


05529
かたちなくわれのゆくてを阻むもの羅刹の貌をして現れよ
カタチナク ワレノユクテヲ ハバムモノ ラセツノカホヲ シテアラワレヨ

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53


05530
館跡の礎石に朝の雨過ぎて野菜の市況告げゐるマイク
ヤカタアトノ ソセキニアサノ アメスギテ ヤサイノシキョウ ツゲヰルマイク

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53


05531
如何ならむ人の出入りに日を逐ひて吊りあげられゆく埴輪の値
イカナラム ヒトノデイリニ ヒヲオヒテ ツリアゲラレユク ハニワノアタヒ

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53


05532
炭殻を運び来ては田を埋めゆく人らはかどる仕事持ちたり
タンガラヲ ハコビキテハタヲ ウズメユク ヒトラハカドル シゴトモチタリ

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53


05533
出で来ては脅かすものキヤップ無き万年筆はた注射筒など
イデキテハ オビヤカスモノ キヤップナキ マンネンヒツハタ チュウシャトウナド

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53


05534
風に揉まるる楡の葉かかる夜々を経て笑ひさざめく如く見え来よ
カゼニモマルル ニレノハカカル ヨヨヲヘテ ヱマヒサザメク ゴトクミエコヨ

『形成』(形成発行所 1959.8) 第7巻8号(通巻76号) p.53