05592
触発を怖れて噤みし言葉あり歩度ゆるめたることも知りつつ
ショクハツヲ　オソレテツグミシ　コトバアリ　ホドユルメタル　コトモシリツツ

05593
山脈に雪ひだ蒼くかげるまで待ちしことさへ告げむすべなし
ヤマナミニ　ユキヒダアオク　カゲルマデ　マチシコトサヘ　ツゲムスベナシ

05594
自らの肩揉みほぐしゐる夜更け錆びつく前の語彙がふくらむ
ミズカラノ　カタモミホグシ　ヰルヨフケ　サビツクマエノ　ゴイガフクラム

05595
燃え殻のごとき心と思はねど焚き火かこむ輪を崩して去りぬ
モエガラノ　ゴトキココロト　オモハネド　タキビカコムワヲ　クズシテサリヌ

05596
信じたき人らの前にひろげられ詐術のごとき折線グラフ
シンジタキ　ヒトラノマエニ　ヒロゲラレ　サジュツノゴトキ　オレセングラフ

05597
内情に立ち入ることも寂しきに白く乾ける河床を渡る
ナイジョウニ　タチイルコトモ　サビシキニ　シロクカワケル　カショウヲワタル