冬の日溜り


05610
日溜りに舞ひ来む語彙もある如し犬の敷き藁替へてやりつつ
ヒダマリニ マヒコムゴイモ アルゴトシ イヌノシキワラ カヘテヤリツツ

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20


05611
再会を促す電話若やげる声に答へてたちまち脆し
サイカイヲ ウナガスデンワ ワカヤゲル コエニコタヘテ タチマチモロシ

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20


05612
少年の面輪を描きゐし瞬時二人子のあることも告げらる
ショウネンノ オモワヲエガキ ヰシシュンジ フタリコノアル コトモツゲラル

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20


05613
探し当てし喜びを隠さぬ電話の声十年の紆余伏せゐるわれに
サガシアテシ ヨロコビヲカクサヌ デンワノコエ ジュウネンノウヨ フセヰルワレニ

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20


05614
甘えゐし心吹っ飛び読む手紙まざまざとわれは憎まれてゐる
アマエヰシ ココロフットビ ヨムテガミ マザマザトワレハ ニクマレテヰル

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20


05615
人伝てに知りし憎悪を受けとめて灼然と今直る心よ
ヒトヅテニ シリシゾウオヲ ウケトメテ シャクゼントイマ ナオルココロヨ

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20


05616
犬を解き文鳥を放ち死にたりと老女の臨終聴けばほださる
イヌヲトキ ブンチョウヲハナチ シニタリト ロウジョノイマハ キケバホダサル

『形成』(形成発行所 1962.1) 第10巻1号(通巻105号) p.20