遅日


05658
内実にそぐはぬ貌を持ち歩く朴あれば朴の花仰ぎつつ
ナイジツニ ソグハヌカホヲ モチアルク ホオアレバホオノ ハナアオギツツ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3


05659
街灯が落とす楕円の影それてうつぎの花の散りしける白
ガイトウガ オトスダエンノ カゲソレテ ウツギノハナノ チリシケルシロ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3


05660
コンパスを開きて測る限界に抛物線の指す未来あり
コンパスヲ ヒラキテハカル ゲンカイニ ホウブツセンノ サスミライアリ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3


05661
女にてつひに敗るる日もあらむ香水の瓶幾つも溜めて
オンナニテ ツヒニヤブルル ヒモアラム コウスイノビン イクツモタメテ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3


05662
眼先に聾啞の母子の指話続き血縁のふと羨しき如し
マナサキニ ロウアノボシノ シワツヅキ ケツエンノフト トモシキゴトシ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3


05663
ころげ来しボール塀ごしに投げ返しまたよりどなき夕べの心
コロゲコシ ボールヘイゴシニ ナゲカエシ マタヨリドナキ ユウベノココロ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3


05664
移るともなく移りゆく船が見え償ひを待つことにも倦みぬ
ウツルトモ ナクウツリユク フネガミエ ツグナヒヲマツ コトニモウミヌ

『形成』(形成発行所 1962.8) 第10巻8号(通巻112号) p.3