路上抄

横向きに湖心にて焦臭き硫酸の付箋してきれぎれの朱肉いろの

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横向きになれるこけしの視線など追ひつつたどきなく病む日あり
ヨコムキニ　ナレルコケシノ　シセンナド　オヒツツタドキ　ナクヤムヒアリ

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3


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湖心にてオール失ふ夢を見し昨夜より青き今朝のみづうみ
コシンニテ　オールウシナフ　ユメヲミシ　ヨベヨリアオキ　ケサノミヅウミ

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3


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焦臭き髪とし不意に思ほえて首振りて見つ夜風のなかに
キナクサキ　カミトシフイニ　オモホエテ　クビフリテミツ　ヨカゼノナカニ

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3


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硫酸の空甕を積む一区劃今朝は真赤な傘干されゐる
リュウサンノ　カラガメヲツム　イチクカク　ケサハマッカナ　カサホサレヰル

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3


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付箋して戻りし書類確実に読まれし証として受けとめむ
フセンシテ　モドリシショルイ　カクジツニ　ヨマレシアカシト　シテウケトメム

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3


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きれぎれの耳鳴り襲ふ夕つ方白靴よごれわが帰りゆく
キレギレノ　ミミナリオソフ　ユウツカタ　シロクツヨゴレ　ワガカエリユク

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3


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朱肉いろのサボテンの花忘れゐし痛みの如く夜の部屋に咲く
シュニクイロノ　サボテンノハナ　ワスレヰシ　イタミノゴトク　ヨノヘヤニサク

『形成』(形成発行所　1962.10)　第10巻10号(通巻114号)　p.3