夕かげ


05679
ふるさとの海猫の島を思ふまで暗き渚に鳥の声する
フルサトノ ウミネコノシマヲ オモフマデ クラキナギサニ トリノコエスル

『形成』(形成発行所 1962.11) 第10巻11号(通巻115号) p.4


05680
見るとなくベンチの男を見てゐるに擦りても擦りてもマッチが点かぬ
ミルトナク ベンチノオトコヲ ミテヰルニ スリテモスリテモ マッチガツカヌ

『形成』(形成発行所 1962.11) 第10巻11号(通巻115号) p.4


05681
われを呼ぶ言葉のごとく漁り火は闇のかなたにしげく瞬く
ワレヲヨブ コトバノゴトク イサリビハ ヤミノカナタニ シゲクマタタク

『形成』(形成発行所 1962.11) 第10巻11号(通巻115号) p.4


05682
身と心呼応しゆかぬ焦ちをさながらにフーガ弾きなづみゐつ
ミトココロ コオウシユカヌ イラダチヲ サナガラニフーガ ヒキナヅミヰツ

『形成』(形成発行所 1962.11) 第10巻11号(通巻115号) p.4


05683
包みきれぬ心の如く道傍のパイプの継ぎ目より湯気洩れてゐる
ツツミキレヌ ココロノゴトク ミタバタノ パイプノツギメヨリ ユゲモレテヰル

『形成』(形成発行所 1962.11) 第10巻11号(通巻115号) p.4


05684
花の種子蒔きし日付もメモし置く厨の壁の小黒板に
ハナノシュシ マキシヒヅケモ メモシオク クリヤノカベノ ショウコクバンニ

『形成』(形成発行所 1962.11) 第10巻11号(通巻115号) p.4