残冬抄


05703
寒鯉を桶に泳がせ売れる見つ焼け跡らしき空地を占めて
カンゴイヲ オケニオヨガセ ウレルミツ ヤケアトラシキ アキチヲシメテ

『形成』(形成発行所 1963.6) 第11巻6号(通巻122号) p.3


05704
夜の空に雲の亀裂をちりばめて明るき月はいづくを渡る
ヨノソラニ クモノキレツヲ チリバメテ アカルキツキハ イヅクヲワタル

『形成』(形成発行所 1963.6) 第11巻6号(通巻122号) p.3


05705
飲み余すジンが重たく輝けば浪費遂げ来し年月長し
ノミアマス ジンガオモタク カガヤケバ ロウヒトゲコシ トシツキナガシ

『形成』(形成発行所 1963.6) 第11巻6号(通巻122号) p.3


05706
手に乗れる文鳥は脚あたたかくマカロニの皿ついばみやまず
テニノレル ブンチョウハアシ アタタカク マカロニノサラ ツイバミヤマズ

『形成』(形成発行所 1963.6) 第11巻6号(通巻122号) p.3


05707
惑ひつつ歩めば遠き丘の道雪をつつぬけて煙突が立つ
マドヒツツ アユメバトオキ オカノミチ ユキヲツツヌケテ エントツガタツ

『形成』(形成発行所 1963.6) 第11巻6号(通巻122号) p.3


05708
カーテンをはり替へて春を招く部屋何のワルツを明日より弾かむ
カーテンヲ ハリカヘテハルヲ マネクヘヤ ナンノワルツヲ アスヨリヒカム

『形成』(形成発行所 1963.6) 第11巻6号(通巻122号) p.3