落葉季


05747
石室の底に落ち葉を敷きつめて死よりも深き眠りが欲しき
イシムロノ ソコニオチバヲ シキツメテ シヨリモフカキ ネムリガホシキ

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.3


05748
あたたかき手よと言はれし記憶さへ蘇りつつわれをさいなむ
アタタカキ テヨトイハレシ キオクサヘ ヨミガエリツツ ワレヲサイナム

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.3


05749
声嗄るるまでに呼ばはば雪空をくぐりて還る木霊もあるや
コエカルル マデニヨバハバ ユキゾラヲ クグリテカエル コダマモアルヤ

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.3


05750
事故の夜のざはめきの中カンテラに鬼面の如き顔照らし合ふ
ジコノヨノ ザハメキノナカ カンテラニ キメンノゴトキ カオテラシアフ

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.3


05751
人を轢きしトロもレールも蔽ふまで一夜落葉の降り積りたり
ヒトヲヒキシ トロモレールモ オオフマデ ヒトヨオチバノ フリツモリタリ

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.3


05752
安らぎに遠きこころぞ夜の卓に固型スープを砕きつつゐて
ヤスラギニ トオキココロゾ ヨノタクニ コケイスープヲ クダキツツヰテ

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.4


05753
砂時計に測られてゐし魔の刻か奪ひ去られて帰らぬ言葉
スナドケイニ ハカラレテヰシ マノトキカ ウバヒサラレテ カエラヌコトバ

『形成』(形成発行所 1963.12) 第11巻12号(通巻128号) p.4